
「シティプロモーションを行っているけれど、まちのファンが増えている実感がない」
「イベントには人が集まるけれど、その後の地域との関わりにつながらない」
「関係人口を増やしたいけれど、具体的にどんな事業を行えばよいかわからない」
自治体のシティプロモーションや地方創生、関係人口創出の事業では、こうした課題を感じている担当者も多いのではないでしょうか。
数年前まで、シティプロモーションというと、まちの美しい風景を撮影したPR動画や、観光スポットを紹介するWebサイト、SNSでの情報発信などが中心になることもありました。
もちろん、地域の魅力を知ってもらうことは大切です。
しかし、美しい動画を制作しただけで、その地域を好きになってもらえるのでしょうか。
イベントに100人集まったとして、その人たちは翌年も来てくれるのでしょうか。
その中から、実際に地域の企業や住民と関わり、新しい取り組みを一緒につくってくれる人が生まれるでしょうか。
私たちは、シティプロモーションや関係人口創出に取り組むうえで、「知ってもらった、その先にどんな関係をつくるのか」が非常に重要だと考えています。
今回ご紹介するのは、守山市で複数年にわたり取り組んできた「起業家の集まるまち守山」の事例です。
しがとせかいでは、2021年度からこの取り組みに関わり、起業家への取材や情報発信、交流イベントの企画・運営、官民連携事業の発信や関係づくりなどをお手伝いしてきました。
最初は、地域にどんな起業家がいるのかを知ってもらうところから始まりました。
そこから、県内外の起業家が集まるイベントが生まれ、実際に企業が守山市で事業に挑戦する官民連携プロジェクトへと発展しています。
さらに、守山市から始まった共創の取り組みは、滋賀県全体の地域課題に取り組むリビングラボ「co.shiga」の活動にもつながっています。
大切にしてきたのは、単に守山市のことを発信するのではなく、守山市に関心を持つ人を増やし、実際に関わる機会をつくり、その関係が次につながる仕組みを育てていくことです。
今回は、約5年間にわたる取り組みの中で、どのような事業を行い、どんな関係が生まれてきたのかをご紹介します。
守山市では、宮本和宏前市長の時代から、地方創生の柱の一つとして「起業家の集まるまち守山」という取り組みを進めてきました。
その考え方は、一般的な創業支援とは少し異なります。
地域で新しく起業する人を増やすことも大切ですが、それだけではありません。
すでに全国で活躍している起業家やスタートアップ、地域の外に拠点を持つ企業にも守山市へ関わってもらう。
そして、その人たちが持つ技術や経験、アイデアを、守山市の地域課題や企業の課題と掛け合わせていく。
そうすることで、守山市に新しい事業や挑戦を生み出していこうという考え方です。
自治体の地方創生というと、人口を増やすための移住定住施策が中心になることもあります。
しかし、守山市の取り組みでは、必ずしも起業家に移住してもらったり、市内に会社を設立してもらったりすることだけを目的にしていません。
例えば、東京で事業を行っている起業家が、守山市のイベントに登壇する。
その人が守山市の企業や行政職員と知り合う。
後日、別の機会に守山市を訪れ、地域の課題について一緒に考える。
そして、守山市をフィールドに、自社のサービスや技術を試す。
そのような関係も、地域にとって大切な関係人口の一つです。
大切なのは、住んでいるかどうかだけではなく、そのまちに継続して関心を持ち、自分から関わりたいと思える関係があることだと考えています。
今回の「起業家の集まるまち守山」では、こうした関係を少しずつ増やしていくことを目指してきました。

しがとせかいがこの取り組みに関わるようになったのは、2021年度からです。
最初に取り組んだのは、地域の起業家を見える化するための情報発信でした。
滋賀県には、さまざまな分野で挑戦している起業家がいます。
地域の課題に取り組む人。
新しい技術を使って事業を立ち上げる人。
滋賀県で事業を始め、全国や海外へ挑戦する人。
しかし、そうした起業家がどんな想いで事業を始め、どんな挑戦をしているのかは、意外と知られていません。
そこで、まずは滋賀県内の10人以上の起業家に取材を行い、インタビュー動画などを制作しました。
今回の取材で大切にしたのは、単に成功している起業家を紹介することではありませんでした。
なぜその事業を始めたのか。
どんなところで苦労したのか。
思い通りに進まなかったことは何か。
これから、どんなことに挑戦したいのか。
こうした話を聞きながら、その起業家がどんな人なのかが伝わるコンテンツを制作していきました。
実際に話を聞いてみると、うまくいったことだけでなく、失敗した経験や、当時悩んでいたことにも多くの学びがありました。
起業家というと、事業が成功した後の姿に注目が集まりがちです。
しかし、挑戦している最中には、まだ結果が出ていないこともあります。
だからこそ、その時点での考えや悩み、挑戦の過程を記録しておくことには価値があります。
数年後、当時取材した起業家が新しい事業を立ち上げたり、さらに大きな挑戦をしていたりする姿を見ると、あの時の経験が今につながっているのだと感じることもあります。
こうした記録は、単なる情報発信ではなく、地域の起業家の歴史を蓄積することにもつながっています。
起業家の情報を発信する取り組みから、次に進めていったのが、実際に起業家が守山市に集まる機会づくりです。
動画やWebサイトで情報を発信することによって、地域で挑戦している人の存在を知ってもらう。
その次は、実際に会って話す機会をつくる。
こうした流れをつくるために、起業家向けのイベントや交流の取り組みが広がっていきました。

2022年には、守山市で起業家向けのブートキャンプが開催されました。
守山市出身の起業家である上原仁さんや、さくらインターネットの田中邦裕さんなどが関わり、起業家同士が学び、交流する機会となりました。
さらに、同年にはスタートアップと投資家をつなぐ「Monthly Pitch SHIGA」も開催されました。
2023年には、スタートアップカンファレンス「IVS」と連携したブートキャンプも守山市で実施されています。
こうした取り組みを通して、守山市という地域が、起業家にとって訪れる理由のある場所になっていきました。
ここで大切なのは、単に地域をPRして「守山市に来てください」と呼びかけることではありません。
起業家にとって、そこに行く意味があるのか。
普段は出会えない人と出会えるのか。
新しい知識や事業のヒントを得られるのか。
自分の事業を前へ進めるきっかけになるのか。
こうした価値があってこそ、地域の外からも人が集まります。
特に、全国で活躍する起業家にとって、守山市に来ることそのものが目的になるわけではありません。
その場所でしか得られない人とのつながりや、事業の可能性があるからこそ、足を運んでもらえるのだと思います。
今回の取り組みでは、こうした「守山市へ来る理由」を少しずつつくってきました。
こうした活動の中で生まれてきたのが、「up stream(アップストリーム)」というプロジェクトです。
「up stream」という名前には、滋賀県らしい考え方が込められています。
近江商人の言葉として知られる「琵琶湖の鮎は外に出て大きくなる」。
滋賀県の中だけにとどまるのではなく、外の世界へ出て挑戦し、大きくなっていく。
そして、成長した起業家が、また滋賀県や守山市に関わり、次の挑戦を応援していく。
そんな循環を目指しています。
今回のプロジェクトでは、Webメディア「up stream」を通じた情報発信と、起業家が実際に集まる交流の機会を組み合わせてきました。
Webサイトで起業家のインタビュー記事を公開する。
動画で事業や考え方を知ってもらう。
そして、その人たちが実際に集まるイベントを開催する。
こうすることで、オンラインで知った人と、オフラインで出会う機会が生まれます。
また、イベントで出会った人が、後日Webサイトの記事や動画を見ることで、相手のことをもっと詳しく知ることもできます。
単発のイベントと、継続的な情報発信を組み合わせる。
この両方を行うことで、イベント当日だけで終わらない関係づくりを目指しました。

「起業家の集まるまち守山」を象徴する取り組みの一つが、「up stream Day」です。
2024年に第1回を開催し、2025年にはさらに規模を拡大して開催しました。
このイベントには、滋賀県内外の起業家、スタートアップ、企業経営者、大学関係者、学生、金融機関、行政など、さまざまな立場の人たちが集まります。
大切にしているのは、単に有名な起業家を呼んで講演してもらうことではありません。
普段はなかなか出会う機会のない人たちが、一つの場所で出会い、新しい関係をつくることです。
2025年2月に開催した「up stream Day」には、261人が参加しました。
そのうち、約40%は滋賀県外からの参加者でした。
地方の一つの自治体で開催されるイベントに、県内だけでなく、県外からも多くの方が足を運んでいただけたことは、大きな成果だと考えています。
今回のイベントでは、スタートアップや大企業、大学、投資家など、さまざまな立場の登壇者が集まり、これからの事業や地域の可能性について意見を交わしました。
また、滋賀経済同友会などとも連携し、地域の経済界とスタートアップが交流する機会にもなりました。
今回のイベントで重視したのが、講演やトークセッションの後に生まれるつながりです。
例えば、登壇者の話を聞いて、ぜひ一度話してみたいと思った参加者がいる。
県内企業の経営者が、面白い技術を持ったスタートアップと出会う。
地域の学生が、普段は会えない経営者と直接話す。
そうした時間をつくるために、交流会や懇親会も組み合わせています。
実際、2025年のイベントでは、本会終了後に100人以上が参加するアフターパーティーも開催されました。
ただ講演を聞いて帰るのではなく、気になった人に声をかけ、次につながるきっかけをつくる。
こうした場があるからこそ、イベントの価値が高まると考えています。
関係人口を考えるときに、私たちが大切にしていることがあります。
それは、一度来た人に、また来たいと思ってもらえるかということです。
例えば、ある年のイベントで出会った人と、翌年も同じ会場で再会する。
その間に、新しい事業を始めたり、仕事で一緒になったりしている。
そしてまた、新しい人を連れて守山市に来る。
こうしたことが積み重なっていくと、守山市は単にイベントが開催される場所ではなく、自分にとって知り合いがいる場所になっていきます。
まちのファンになるきっかけは、必ずしも観光地や名所だけではありません。
そこに会いたい人がいること。
応援したい人がいること。
自分も何かに挑戦できそうだと思えること。
そうした人との関係が、地域への愛着につながると考えています。

「起業家の集まるまち守山」では、大きなカンファレンスだけでなく、さまざまなテーマの交流イベントも行ってきました。
例えば、女性起業家の挑戦を応援する取り組みです。
2025年には「GIRAFFES JAPAN KINKI × up stream vol.2」を開催し、女性起業家や、これから新しいことを始めたい人、挑戦を応援する企業や行政関係者など、80人以上が集まりました。
こうしたイベントでは、起業家同士の交流だけでなく、これから何かを始めたいと思っている人にとっての入口も大切にしています。
地域のスタートアップ支援では、すでに事業を始めている人への支援が中心になることもあります。
しかし、まだ起業していない人や、将来何かに挑戦したいと考えている学生などにも、関わる機会が必要です。
例えば、大学生がイベントの運営に関わる。
高校生が受付や司会に挑戦する。
実際に起業している人の話を間近で聞く。
その経験を通じて、新しい活動を始める。
こうしたことも、地域にとって大切な成果の一つです。
実際に「up stream Day」では、学生がイベントの司会や運営、取材記事の制作などに関わってきました。
2025年の開催レポートでは、前年も運営に関わっていた学生スタッフが、イベントの経験を通じて自分自身の視野が広がり、その後の活動につながったことを紹介しています。
イベントに参加して終わるのではなく、次は自分が企画や運営を担う側になる。
これは、まさしく関わり方が深まっている事例だと思います。
今回の事業では、起業家や経営者だけでなく、学生、地域企業、金融機関、行政職員など、さまざまな人が関わっています。
それぞれに立場も違えば、守山市との関わり方も異なります。
事業の実証実験を行う人。
イベントを運営する人。
起業家に出資や支援をする人。
地域の課題を共有する人。
新しい取り組みを応援する人。
こうした多様な関わり方を用意することで、守山市に関わる入口が増えてきました。
私たちは、この入口の多さも、継続的な関係人口づくりでは重要だと考えています。

交流イベントを通じて、守山市に多くの起業家や企業が集まるようになりました。
ただ、そこで一つの課題が生まれます。
集まった人たちと、次に何をするのか。
交流イベントを開催すれば、人と人のつながりは生まれます。
しかし、それだけでは、地域に具体的な変化が生まれるとは限りません。
そこで、次の段階として進めてきたのが、実際に守山市をフィールドにした官民連携事業です。
2024年度から本格的に始まったのが、「up stream lab」という官民連携プロジェクトです。
この事業では、地域や社会の課題を解決するために、新しい技術やサービスを実証したい企業を全国から募集しています。
そして、採択された企業が守山市内で実際に実証実験を行います。
ここで大切なのは、単に補助金を交付するだけではないことです。
実証実験に必要な場所を探す。
地域の企業や団体とつなぐ。
学校や自治会など、協力してもらえる場所との調整を行う。
必要に応じて、行政としての情報発信や広報も支援する。
こうしたことを守山市が関係者とともに進めていく仕組みです。

初年度となる2024年度には、全国から23件の応募があり、7社が採択されました。
実証実験のテーマは、空き家、子育て、交通、企業のDXなど、さまざまな分野に広がりました。
取り組みの場所も、市役所の中だけではありません。
地域の企業。
商工会議所。
高校。
自治会。
市内のさまざまな場所が実証実験のフィールドになりました。
つまり、守山市の中にある地域課題と、外部の企業が持っている技術やアイデアを組み合わせる仕組みです。
例えば、地域の空き家の課題に取り組みたい企業がいる。
その企業が守山市の地域や住民とつながることで、実際の課題を知り、自分たちのサービスを試すことができる。
一方、地域の人にとっては、これまで地域の中だけでは解決が難しかった課題に、新しい方法で取り組む機会になります。
こうした関係をつくることが、官民連携事業の特徴です。
2025年度には、さらに4社が採択され、新しい実証実験が始まりました。
例えば、京セラ株式会社による、タブレットを使った模擬投票体験。
Hmcomm株式会社による、AIと音響技術を使った水道管の漏水検知。
ノバルス株式会社による、IoT技術を活用した高齢者見守りの検証。
ソーシャル・アイディー株式会社による、市民のSNS投稿を活用した観光情報発信。
それぞれ、企業が持っている技術やサービスを、守山市の地域課題と組み合わせたものです。
2024年度と2025年度を合わせると、11社が守山市での実証に向けて採択されています。
もちろん、採択されたことと、事業として成果が出たことは同じではありません。
実際に地域で使えるサービスになるかどうかは、その後の検証や改善が必要です。
ただ、守山市が継続して実証の機会を提供してきたことで、市外・県外の企業が地域に関わる具体的な入口が増えてきたことは、大きな成果の一つだと考えています。
守山市の官民連携で重要なのが、行政側の関わり方です。
通常、新しいサービスを地域で実証しようとすると、企業だけでは難しいことがたくさんあります。
学校で実施したい場合には、教育現場との調整が必要です。
地域住民に協力してもらう場合には、自治会や地域団体との関係づくりが必要です。
水道などのインフラに関する実証であれば、行政が持っている情報や、専門的な部署との調整が必要になります。
守山市では、こうした調整も官民連携の重要な役割として考えています。
企業が地域で新しいことに挑戦できるように、行政が関係者をつなぎ、実施に向けた調整を行う。
単に行政と企業が一緒に名前を並べるのではなく、実際の事業が動くところまで進める。
こうした姿勢が、守山市の官民連携の特徴になっています。
官民連携事業において、もう一つ大切なのが、実証実験の後です。
補助金を活用して実証実験を行い、成果報告会を開催する。
それだけで終わってしまうと、翌年度には新しい事業としてゼロから始めることになってしまいます。
しかし、実証実験を通して企業と地域の間に関係が生まれていれば、その後も新しい取り組みにつながる可能性があります。
2026年8月には、守山市で「起業家の集まるまち、その先会議」が開催されました。
そこでは、これまでの官民連携の取り組みを振り返りながら、実証実験を社会実装や次の事業へどうつなげていくかについて議論が行われました。
例えば、Hmcomm株式会社は、水道管の漏水を早期に発見するための実証に取り組んでいます。
また、ソーシャル・アイディー株式会社は、市民のInstagram投稿を観光情報として活用する仕組みづくりに取り組みました。
こうした取り組みでは、企業が技術やサービスを持っているだけではなく、実際の地域で使える形にしていく必要があります。
守山市で実証を行う中で、行政や地域の人と一緒に仕組みを改善していく。
そこで得られた経験や実績が、次の自治体や企業への展開にも活用される。
このように、守山市での挑戦が、企業にとっても次の事業につながる可能性を生んでいます。
地域にとっては、新しい技術を活用できる機会になる。
企業にとっては、実証実験のフィールドや地域との接点が得られる。
行政にとっては、地域の課題に新しい方法で取り組むことができる。
こうした関係ができることも、今回の官民連携事業の価値だと考えています。

今回の取り組みから広がっていった動きの一つが、一般社団法人co.shigaです。
co.shigaは、滋賀県の地域課題に対して、行政や企業、学生、大学などが連携しながら、新しい取り組みをつくっていくリビングラボです。
守山市での官民連携や起業家交流の流れを背景に、民間主体の共創活動として広がってきました。
2024年7月には一般社団法人として設立されています。
co.shigaでは、地域の課題や、新しく挑戦したいことを持っている人たちが集まり、さまざまなテーマで交流や共創に取り組んでいます。
例えば、自治体が抱えている課題に、企業が持つサービスや技術を掛け合わせる。
地域の企業が考えている新しい事業に、学生や外部の人材が参加する。
普段は接点のない人たちが集まり、一緒に取り組む企画を考える。
こうした活動を守山市だけでなく、滋賀県全体で進めています。
ここで重要なのは、行政の委託事業とは別に、民間主体の活動が育っていることです。
地方創生の事業では、行政の予算が終わると取り組みそのものも終わってしまうことがあります。
一方で、地域に関わる人たち自身が新しい活動を始め、別の組織として取り組みを続けていくことができれば、行政の事業だけに依存しない関係づくりにつながります。
守山市で生まれたつながりが、滋賀県全体の共創活動にも広がっている。
これは、複数年にわたる地域との関係づくりから生まれた展開の一つだと思っています。
2021年度から関わってきた「起業家の集まるまち守山」の取り組みは、起業家の情報発信から始まり、交流イベント、官民連携による実証実験、そして民間による共創活動へと広がってきました。
主な取り組みを整理すると、次のようになります。
| 取り組み | 主な内容・成果 |
|---|---|
| 起業家の情報発信 | 滋賀県内の10人以上の起業家に取材し、動画などで挑戦を発信 |
| up stream | 起業家の記事・動画を蓄積し、情報発信の基盤を構築 |
| 起業家交流イベント | ブートキャンプ、ピッチイベントなどを通じた交流機会の創出 |
| up stream Day 2025 | 261人が参加、約40%が県外からの参加 |
| 女性起業家支援 | 女性起業家や挑戦者をつなぐイベントを開催 |
| up stream lab | 2024年度7社、2025年度4社が実証事業者として採択 |
| 官民連携 | 企業・学校・地域団体・行政をつなぎ、実証を支援 |
| co.shiga | 守山市での流れを背景に、滋賀県全体で共創に取り組む民間組織へ |
| その先会議 | 2026年、実証の次の展開や社会実装について議論 |
これらは、すべてが同じ事業として実施されたものではありません。
守山市が主催する事業、民間が主体となって実施する事業、複数の団体が連携して進める事業など、それぞれに異なる役割があります。
ただ、共通しているのは、守山市を中心に人が集まり、つながり、実際の挑戦につながる機会が増えてきたということです。
単なる認知の拡大だけではなく、実際に地域へ関わる入口をつくってきたことが、今回の取り組みの大きな特徴だと考えています。

ここで改めて、シティプロモーションや関係人口創出について考えてみたいと思います。
例えば、まちのPR動画が100万回再生されたとします。
それは、多くの人にまちのことを知ってもらえたという意味では大きな成果です。
しかし、その動画を見た人のうち、どれだけの人が実際にまちを訪れたでしょうか。
そして、その中から何度も訪れる人や、地域の人たちと関係を持つ人は、どれだけ生まれたでしょうか。
私たちは、こうした部分も大切にしたいと考えています。
地域の名前を知っていることと、その地域に愛着を持っていることは、必ずしも同じではありません。
例えば、旅行で一度訪れたまちでも、そこで出会った人がとても親切だったり、面白い経験ができたりすると、また行きたいと思うことがあります。
それと同じように、守山市の取り組みでも、地域にいる人たちとの関係を大切にしてきました。
イベントで出会った人。
一緒に企画を考えた人。
実証実験で協力してくれた人。
次に会ったときに声をかけてくれる人。
そうした一人一人との関係が、守山市というまちへの愛着につながっていくのではないかと思っています。
「まちのファンを増やしたい」という言葉は、自治体のシティプロモーションでもよく使われます。
しかし、単にSNSで情報を発信しているだけで、自然とファンが生まれるとは限りません。
その地域に関わる理由が必要です。
守山市の場合、その理由の一つが「挑戦できること」でした。
起業家にとって、守山市に行けば新しい人と出会える。
事業について相談できる人がいる。
自分たちのサービスを実際に試せる機会がある。
そして、その挑戦を応援してくれる人がいる。
そうした経験が積み重なることで、守山市に愛着を持ち、また関わりたいと思う人が増えていくのではないでしょうか。
ファンを増やすためにPRするのではなく、ファンになる理由を地域の中につくっていく。
これが、今回の事業から見えてきた、関係人口づくりの大切な考え方です。
今回の取り組みを振り返ると、制度やイベントの仕組みと同じくらい重要だったことがあります。
それが、実際に事業を動かしていく人たちの存在です。
「起業家の集まるまち守山」では、守山市の行政職員だけでなく、地域の起業家や企業経営者、学生、さまざまな支援機関の方々が関わってきました。
その中でも、プロジェクトの中心となってきた人物の一人が、守山市出身の起業家である上原仁さんです。
そして、守山市の行政側で企業や起業家との関係づくりに取り組んできた杉本悠太さん。
こうした人たちが、それぞれの立場から守山市の未来を考え、実際に人をつなぎ、取り組みを進めてきました。
地域の事業では、どれだけ立派な企画書をつくっても、実際に人を動かすのは簡単ではありません。
県外の起業家に声をかける。
イベントに登壇してもらう。
地域の企業を紹介する。
行政の部署との調整を行う。
新しい企画を一緒に考える。
こうした一つ一つの行動には、実際に動く人が必要です。
そして、単に仕事として進めるだけではなく、「この地域を面白くしたい」「この人の挑戦を応援したい」という気持ちがあることも、大切だと思います。
例えば、イベントが終わった後にも、参加者から相談が届く。
その相談に対して、地域の企業を紹介したり、次のイベントへ声をかけたりする。
そうした関係が積み重なることで、単年度の事業では生まれにくい信頼関係が育っていきます。
今回の守山市の取り組みでも、地域の未来に愛情を持って関わる人たちの存在が、継続的な関係づくりを支えてきました。
私たちが大切にしているのは、行政と受託事業者だけで事業を完結させないことです。
もちろん、行政から業務を受託し、企画や運営を行うことはできます。
しかし、その事業を通して地域に新しい関係を残していくためには、さまざまな人の協力が必要です。
地域の経営者。
学生。
金融機関。
商工会議所。
地域活動に取り組んでいる人。
そうした人たちが、自分たちの活動として関われる状態をつくることが重要です。
例えば、最初はイベントの参加者だった人が、次の年には運営する側になる。
最初は登壇するだけだった企業が、地域で実証実験を行う。
最初は地域課題について話していただけだった人が、新しいプロジェクトを始める。
こうした変化が生まれていくと、事業そのものが地域の中に根づきやすくなります。
関係人口とは、単に地域外の人を集めることではなく、関わる人が少しずつ主役になっていくことでもある。
今回の守山市の事例は、そうした可能性を感じる取り組みになっています。
今回の「起業家の集まるまち守山」の取り組みを通して、自治体のシティプロモーションや関係人口創出で大切だと感じたことを整理すると、3つあります。
守山市の場合は、「起業家の集まるまち守山」というテーマがありました。
シティプロモーションでは、観光、移住定住、産業振興、子育てなど、さまざまな魅力を発信できます。
しかし、すべてを同時に発信しようとすると、まちとして何を伝えたいのかがわかりにくくなることもあります。
そこで、誰にどんなまちだと思ってもらいたいのかを考え、共通するテーマをつくることが大切です。
守山市では、起業家や挑戦したい人が集まり、新しい事業が生まれるまちという方向性を掲げました。
そして、そのテーマを軸に、情報発信やイベント、官民連携を組み合わせていきました。
まちの情報を見て興味を持っても、その後に何をすればよいのかわからなければ、関係が途切れてしまうことがあります。
そこで、実際に参加できる機会を用意することが重要です。
守山市では、起業家のインタビュー記事や動画を見て関心を持った人が、交流イベントに参加できる。
イベントで出会った人が、官民連携の実証実験に挑戦できる。
さらに、その経験を次の事業につなげることができる。
このように、関わり方が段階的に深まる仕組みをつくってきました。
単にイベントを増やすのではなく、それぞれのイベントや事業が次につながるように考えることが大切です。
地方創生の事業では、年度ごとに予算や担当者が変わることもあります。
そのため、行政の事業として実施するだけでは、継続的な取り組みにすることが難しい場合もあります。
だからこそ、地域で実際に動く人や組織との関係をつくることが重要です。
今回の守山市では、起業家や地域企業、金融機関、学生など、さまざまな人たちが関わる機会を増やしてきました。
さらに、民間主体のco.shigaのような共創活動も生まれています。
行政の予算があるから参加するのではなく、そこに関わる意味があるから参加する。
そのような状態を少しずつつくっていくことが、長期的な関係人口づくりにつながると考えています。
今回の守山市の取り組みは、最初から今のような規模だったわけではありません。
まずは起業家を取材し、情報発信を行うところから始まりました。
そこから、実際に人が集まるイベントが生まれました。
さらに、守山市に集まった起業家や企業が、地域で具体的な挑戦を行う官民連携事業へと発展していきました。
そして今では、その実証実験の先にある社会実装や、民間主体の活動へどうつなげていくかという段階に進んでいます。
こうして振り返ってみると、一つ一つの取り組みは、それぞれ異なる事業です。
しかし、「起業家が集まり、挑戦できるまち」という共通の方向性があるからこそ、それぞれの取り組みがつながってきました。
私たちは、これが複数年にわたるシティプロモーションの価値だと考えています。
毎年新しいイベントをゼロから企画するのではなく、前年に生まれたつながりを次年度に活かしていく。
そして、地域に関わる人が少しずつ増え、新しい活動が生まれていく。
そのような事業をつくることができれば、シティプロモーションは単なる情報発信にとどまらないものになります。
しがとせかいでは、自治体のシティプロモーションや関係人口創出について、情報発信だけではなく、企画やイベント、地域企業との連携まで組み合わせて取り組んでいます。
今回の守山市のように、まずは地域に関わる人を取材し、その魅力を伝えることから始める事業もあります。
また、地域の課題に取り組みたい企業や人材を集めるイベントを企画することもあります。
さらに、実際に地域の課題と外部の企業や人材をつなぎ、具体的なプロジェクトへと発展させる取り組みも行っています。
大切にしているのは、最初から大きなイベントを開催することではありません。
その地域には、どんな人がいるのか。
どんな人に関わってほしいのか。
関心を持った人が、次に何をできるのか。
そして、その関係が継続していくためには、どんな仕組みが必要なのか。
こうしたことを一つずつ考えながら、事業を組み立てています。
シティプロモーションは、まちの魅力を伝える仕事です。
でも、それだけではありません。
そのまちに関わりたいと思う人を増やすこと。
その人たちが実際に関わる機会をつくること。
そして、地域の人と一緒に新しい挑戦を生み出すこと。
そうしたところまでつながっていくシティプロモーションを、私たちはつくっていきたいと考えています。
しがとせかいでは、自治体のシティプロモーション、関係人口創出、官民連携、起業家支援などの事業について、企画から運営、情報発信まで一貫してお手伝いしています。
今回の守山市のように、複数年にわたり、地域に関わる人を少しずつ増やしながら事業を発展させていくこともできます。
例えば、
「地域のファンを増やしたいけれど、具体的な企画が決まっていない」
「シティプロモーションをSNSや動画制作だけで終わらせたくない」
「県外の企業や起業家に、地域へ関わってもらう仕組みをつくりたい」
「イベントを開催するだけでなく、その後の交流や事業につなげたい」
「官民連携の取り組みを立ち上げたいけれど、企業との関係づくりが難しい」
「毎年の事業を単発で終わらせず、地域に継続する仕組みをつくりたい」
そんな段階からでも、ぜひご相談ください。
地域の特性や課題に合わせて、情報発信、イベント、企業とのマッチング、官民連携の実証実験などを組み合わせながら、一緒に事業を考えます。
そして、事業を進めるうえで大切にしたいのが、地域の人たちへの愛情です。
その地域で暮らしている人。
挑戦している人。
企業を経営している人。
これから何かを始めようとしている人。
そうした人たちの想いや活動に目を向けながら、地域の魅力を見つけ、関係をつくっていく。
「知っているまち」から「好きなまち」へ。そして「自分も関わりたいまち」へ。
そんなシティプロモーション・関係人口創出を、一緒につくっていきます。