2026年10月26日(月)、守山市役所にて「ひとり広報教室〜今日、学び尽くす〜」を開催しました。

主催:守山商工会議所 運営:しがとせかい株式会社
「ひとり広報」とは、会社や団体で広報の仕事をひとりで担っている方のこと。
ニュースの発信、メディア対応、SNSの運用、イベントの準備まで、仕事の幅は広いのに、社内に相談できる相手はなかなかいません。
この教室は、そうした担当者が地域で一緒に学び、横のつながりをつくる場として始まり、今年で3回目になりました。
今年は、午前を「これから広報をやりたい方へ」、午後を「社内広報を強化したい方へ」とし、1日を「1時間目」から「5時間目」、そして「放課後」の交流会までの時間割で構成しました。
記者、過去の受講生、県内企業の広報担当者と、立場の異なる登壇者から話を聞く1日の様子をお届けします。

【プログラム】
1時間目|メディアに聞く!「広報で取り上げたいネタといえば?」
京都新聞 滋賀南部総局長 日下田貴政 氏/びわ湖大津経済新聞・近江八幡経済新聞 記者 山中輝子 氏/モデレーター 田ケ原恵美 氏
2時間目|広報セミナーを受けたその後「どんな広報になりましたか?」
株式会社あいむ 小倉陽子 氏/emma nail 西村未優 氏/モデレーター 中野龍馬
3時間目|社内広報のキを学ぶ「会社の広報って何するの?」
株式会社Relays 代表取締役 田ケ原恵美 氏
4時間目|滋賀県内で広報をしている人に聞く!「社内広報、どんな風にしていますか?」
株式会社澤村 和田遼香 氏/株式会社尾賀亀 藤井彩加 氏/モデレーター 中野龍馬
5時間目|ワークショップ「会社の広報計画を建てよう」
放課後|交流会
開会にあたり、守山商工会議所の田中直子さんにご挨拶をいただきました。
「毎年少しずつグレードアップしている。今年は過去の受講者や、企業で広報を担う方にも登壇いただく」と紹介し、地元の事業所がプレスリリースをたくさん出してくれたらうれしい、と期待を語りました。
この日のポイントはふたつ。
仲良くなりましょう!
ひとりで広報を担うと、「SNS、こんなんでいいんかな」といった小さな悩みを相談できる相手が少なくなりがちです。
積極的に名刺交換しましょう!
相手がどこで何をしているかを知ることから、会話が始まります。
さっそく「1分間チャレンジ」として、テーブルごとに自己紹介をしました。
話すのは「名前」「所属」「今年一番良かったこと」の3つ。
誕生日が一番近い人から時計回りで、1人1分ずつ話し切ります。カウントダウンのたびに笑い声や拍手が起き、会場が一気に温まりました。
最初の授業は「メディアに聞く!広報で取り上げたいネタといえば?」です。
京都新聞 滋賀南部総局長の日下田貴政さんと、びわ湖大津経済新聞・近江八幡経済新聞記者の山中輝子さんが登壇し、株式会社Relaysの田ケ原恵美さんがモデレーターを務めました。
情報を「受け取る側」が何を見ているのかを、現役の記者から学ぶ時間です。

山中さんは、地域に特化したウェブメディアの記者として、記事になる条件を「鮮度」「地域性」「物語性」「写真」の4つに整理しました。
まず鮮度です。所属する「みんなの経済新聞ネットワーク」には掲載期限のルールがあり、情報を届けるタイミングが少し遅れるだけで記事にできなくなります。
新店オープン: オープン前に。オープンから1か月を過ぎると掲載できない
イベント告知: 1か月前。遅くとも2週間前までに
開催レポート、新商品、本の発売など: 発生から10日以内
「きちんとしたリリースを書こうとして遅くなるより、こんなことがありましたと早く教えてほしい」と山中さん。

地域性の例として紹介されたのは、奄美群島で「逃げたヒヨコが5か月後に鶏になって帰ってきた」という記事です。
その地域でしか書けない話こそが求められていて、「こんなんニュースにならへんかも」ということこそ教えてほしい、と語りました。
物語性では、守山の園児が綿花の種をまき、収穫までを追うプロジェクトを挙げ、子どもたちの成長を追えると「書く側も追いたくなる」と話しました。
ネットニュースでは写真が命です。
人の表情、季節感、動きのある場面など「面白い写真が撮れそう」と思えば現場に行くそうです。
一方で、AIで生成した画像や、チラシの画像だけを送られても記事には使えないという注意もありました。
日下田さんのもとには、県や市役所をはじめ、メール、郵便、FAXで毎日大量のリリースが届きます。
その中で飛びつくのは、「へえ」「おお」と思わせてくれたものだといいます。

そのなかで、掲載に至るまでの大きなポイントはこの5つ。
A4一枚に収める。
何を、いつ、どこで、何のためにやるのかがパッとつかめること。問い合わせ先の電話番号も必ず。
見た目は関係ない。
手書きでも中身が面白ければ飛びつくのだそう。
送るのは1〜3週間前。
一番大事なのは社会性・公益性。 地域のためになるか、困っている人の役に立つか。
一方で、新商品やセールの告知そのままでは難しく、記事としての掲載ではなく広告・宣伝の領域になるそうです。

実際にリリースがきっかけで記事になった例として、滋賀県LPガス協会が熊本の被災地に仮設風呂を運ぶ活動が紹介されました。
リリースの最後に書かれていた「ガス屋でできることをやる」という心意気に引かれ、休みの日に自ら取材に行ったそうです。
そのほか、野洲市の段ボール会社がつくった精巧な恐竜や、朝から道の駅に行列ができた琵琶湖のキーホルダーなど、「記者の純粋な興味関心・面白さ」から記事になった例も並びました。
後半は、田ケ原さんが広報担当者の目線で質問。
記者のお二人の「ぶっちゃけ」をダイジェストでお届けします。

催促の電話は逆効果。
毎日たくさんのリリースが届くなかでも、きちんと読んで判断されています。
私たちはついつい「どうでしたか?」と電話したくなるものですが、行かないつもりだったけど電話があったから行くということは基本的にないのだそう。
興味を持っていただければ記者の方から連絡が来るので、懲りずにたくさんリリースを送り続けてみましょう!
返事が早い広報に声がかかる。
「今日ネタがないという日、すぐ返事や写真をくれる広報さんが先に頭に浮かんで連絡します」と、山中さん。
不都合な質問にも客観的に応じる広報は信用できる。
記者は、ちょっと嫌な質問もしなければなりません。たとえば、とある売り上げに対して「なぜ減っているのか」といった質問とか。
そういった内容にも真摯に対応できることが、私たちの役目かもしれません。
毎年のイベントは「去年と何が違うか」。
サンタの格好で髪を切る美容室のように、他と違うことがあれば記者の方は飛びつきたくなるのだそう。
読まれるのはストーリー。
ただし「話をつくりすぎてもいけない」と日下田さん。山中さんは、競技との出会いや挫折まで長く話を聞いた若いアスリートの記事が、特に反響を得たと紹介しました。
会場からは、企業によるインフルエンサー活用について質問が出ました。
お二人とも効果は実感しているとしつつ、「報道は社会性や公共性が第一で、何重ものチェックを経て発信している。一方で、インフルエンサーの方はやっぱり即時性に強みがある。そもそも役割が違うので、必要な効果に応じて使い分けてもらえたら」と答えました。
2時間目には、過去のひとり広報教室を受講したお二人が「卒業生」として初めて登壇しました。
深爪矯正専門サロン「emma nail」を経営する西村未優さんと、守山市に本社を置く介護事業者、株式会社あいむの小倉陽子さんです。モデレーターは弊社代表の中野龍馬が務めました。
西村さんは金融業の営業職からネイリストに転職し、守山市でサロンを開かれました。
ご自身も深爪に悩んだ経験があり、「自分の爪は変わらない」と諦めている人に届けたいという思いがあります。
2024年の教室に参加したのは、2店舗目の立ち上げで忙しい時期でした。

当時の目的は、とにかく認知度を上げること。
教室で学んだプレスリリースをきっかけにびわ湖大津経済新聞の記事になり、Yahoo!ニュースにも配信されて、予約数が10倍になったそうです。
「爪にコンプレックスを持つ人のためのサロンは、まだ少ない。まず知ってもらうことから始めて、今は悩んでいる人の役に立てていると感じる」と話しました。
小倉さんは総務部で行政への申請書類をつくりながら、広報を担当されています。
介護業界は人手不足が深刻で、同社の広報は「一緒に働く人を集めること」に振り切っています。とはいえ、求人そのものは記事になりません。

そこで昨年の教室では、若者向けのオープンカンパニーを題材にリリースを磨き直しました。
企画の中にあった「高齢者と一緒にたこ焼きを焼く」場面に焦点を当て、「仮想祖父母とたこ焼きパーティー」をタイトルに。
「自社の求人」ではなく、「核家族化で高齢者と接する機会がない若者と、これからの介護人材」という社会の話として書いた結果、実際に記事になりました。
記事のあとに参加の問い合わせが殺到したわけではありません。
それでも小倉さんは、この企画をなぜ社会に伝える価値があるのかを社内で考えたこと、企画に携わった若手社員が取材を経験できたことが大きな成果だったといいます。
この視点は、普段のSNSの発信にも生きているそうです。
ここで中野が、会場にいた1時間目の記者お二人に「元のチラシだけが届いていたら、取り上げたか」と尋ねました。

日下田さんは「日時や場所、対象が簡潔で、チラシとしては悪くない」としたうえで、「なぜたこ焼きパーティーなのかをもっと前に出していい」と助言。
山中さんは「仮想祖父母という言葉に、えっ、なんなん?と引っかかる」と評価しました。
あわせてお二人とも、AIでつくったイメージ写真は響かないといいます。
「若手社員がチラシを持って笑っている写真のほうが、温度を感じる」のだとか。
後半は、お二人の広報の現状を率直に聞きました。
まずは、時間の使い方。小倉さんは申請業務と広報誌づくりが6対4から5対5。
西村さんは広報にほとんど時間を割けない中でも、ブログとインスタグラムのストーリーは毎日更新しています。
そして、西村さんはその中でも特に、残る情報に時間を使うようにしているそう。
Yahoo!ニュースの記事はやがて消え、そこからの予約も途絶えました。
「過去のブログ記事は今も検索で上がってくる。日々の積み重ねが大事」と実感しています。

一方、小倉さんは紙の広報誌が果たす役割についても語りました。
SNSを見ない世代に届くため、あいむでは広報誌をやめられません。
調理補助の募集は広報誌のほうが応募が来る一方、若い介護職の募集を載せても反応はありません。媒体ごとに届く相手が違うのです。
課題としてあがったのは、社内を動かすひとり広報の難しさ。
広報の企画を上司に通す、現場に写真や情報を頼んでも忙しくて集まらない。小倉さんが今も苦労しているところです。
そして、取り上げられない怖さや、バズとの距離感。
「この程度の情報では記者の目に留まらないのでは」という不安が、次のリリースを出す一歩を重くしていると小倉さんは話しました。
取り上げられない、見られないことへの恐怖心から、西村さんは一時、SNSを伸ばすことが目的になっていたといいます。
今は「予約してください」ではなく、「悩んでいる人にラブレターを書くような気持ちで」発信しています。

最後に、これから広報を始める参加者に向けて、「どんな人に広報担当として来てほしいか」を尋ねました。
西村さんは「自社の商品や事業が大好きな人。ストーリーには情熱が要り、情熱は愛から生まれる」。
小倉さんは「ひとりで全部できる人より、話し合いながらチームで進められる人」と答えました。
午後の部は、社内広報の基本のキを学ぶ「会社の広報って何するの?」からスタート。
講師は株式会社Relays代表取締役の田ケ原恵美さん。
ITベンチャーで広報部を立ち上げたあと独立し、PR TIMES公認のプレスリリースエバンジェリストや守山市広報PRアドバイザーも務められています。

田ケ原さんは、広報を「知られること」の先にある、会社やサービスを好きになってもらうための仕事だと整理しました。
うまくいけば、会社の説明にかかる手間が減り、取引先や地域との信頼が育ち、届いた反響を商品づくりにも生かせます。
その前提になるのが、「なぜ自分たちがこれをやるのか」を経営者も社員も言葉にできることだといいます。
広報の活動は、大きく4つのメディアに分けて考えられます。広告のように枠を買って認知を得る「ペイドメディア」は、広報というより広告の領域。
プレスリリースや記者との関係づくりで評判と信頼を得るのが「アーンドメディア」、SNSで共感を得るのが「ソーシャルメディア」、自社のホームページなどで理解を深めてもらうのが「オウンドメディア」です。
すべてをひとりで担う必要はなく、できるところからで構わないそうです。
また、情報には「ストック」と「フロー」があります。
ホームページや創業の物語のように変わらない情報が土台で、SNSのように流れていく情報は「まずは量で勝負」。
どれだけ派手に発信しても、たどり着いた先のホームページが古いままだと信頼されにくい、と土台を整える大切さを話しました。
広報の一番の腕の見せどころは、自社のサービスと今の時流との接点を探すこと。
「普通の会社だから独自性がない」ということはなく、どの会社にもらしさはある、と田ケ原さん。
品質、価格、誰に向けたものかといった要素を、季節や社会の動きと2つ、3つ掛け合わせるとニュースになりやすくなります。

午前の部で話題になった「採用」も、切り口次第でニュースになります。
たとえば、花粉症の社員のために高級ティッシュなどを会社が負担する「花粉症手当」。
花粉の季節になると、テレビで繰り返し取り上げられました。お金をかけなくても、考え方ひとつでニュースはつくれるという例です。
秋の運動会シーズンに合わせた社内運動会や、就活解禁の時期に合わせた取り組みのように、毎年必ず報道される時期に乗る企画も有効です。
書類選考をやめて応募者全員に会う新卒採用は、その意外性が話題になりました。学生も会社をよく調べてから面接に来るようになったそうです。
田ケ原さん自身の事例も紹介されました。
梅雨の時期に始めた「雨の日割」は4、5年続き、毎年テレビで紹介される企画になりました。
京都の店舗では京都新聞やYahoo!ニュースにも掲載され、「東京だからできる、という時代ではもうない」と話します。
ほかにも、店のリニューアル日を「葛飾北斎の誕生日」と「日本茶の日」に掛けて内覧会を案内した例や、自社だけでは話題になりにくいときに他社と組んで共通の話題として売り込んだ例もありました。
プレスリリースの基本は、タイトル(30文字以内)、リード文(5W1H)、本文(起承転結)、問い合わせ先。
そのうえで田ケ原さんは、配信したリリースが記事を待たずに直接読まれる時代になっていると指摘しました。
たとえばPR TIMESでは、開催地の位置情報を入れておくと地域メディアに拾われやすくなります。記者に直接送らなくても、地元紙に掲載された例があるそうです。
さらに、スマートフォンの検索窓の下に表示されるおすすめ記事「Google Discover」に、PR TIMESやnoteの記事が載るようになりました。
ある調査リリースは約5万PVを集め、末尾に載せた商品リンクから売上にもつながったといいます。配信費用が気になるなら、無料で使えるnoteから始めるのもひとつの手です。
田ケ原さんが「ヒリヒリしている」と語ったのが、AIによる変化です。
テレビ番組のディレクターからは、「取材先の候補をAIに聞いている」という声も出てきているそうです。
つまり、AIが参照できる情報をウェブ上にどれだけ残しているかが、これからの露出を左右するということ。
数週間で消えるニュース記事より、残り続ける発信が意味を持ちます。午前の部で西村さんが語った「残る情報」の話とも重なります。
一方でAIは、切り口の案出しやリリースの下書き、メディアリストづくりの強い味方にもなります。
会場では、この日のイベント告知ページの情報をGemini、Claude、ChatGPTの3つに入れ、リリースを書かせて比べてみせました。
それぞれタイトルも切り口も異なり、「時期によって性能が変わるので、毎回複数に入れて筋の良いものを使う」のが今のやり方だそうです。
ただし、AIに渡す「事実」を集めるのは広報担当者の仕事です。
今の姿(As is)と、これからなりたい姿(To be)を比べ、その差を埋めるために何を伝えるかを整理する。
「作業はAIに任せていい。でも、らしさや信頼を培うところは人が担う」という言葉で、講義が締めくくられました。
4時間目は、滋賀県内で広報を担うお二人に「社内広報、どんな風にしていますか?」と尋ねました。
登壇者は、株式会社尾賀亀 経営管理部 広報担当の藤井彩加さんと、株式会社澤村 広報の和田遼香さん。モデレーターは中野が務めました。
株式会社尾賀亀は、エネルギーと食品の2つの事業で暮らしを支える会社です。
地元では「ガソリンスタンドの尾賀亀さん」として知られ、工場向けの潤滑油やパン屋向けの小麦粉の卸も手がけています。

藤井さんは編集・ライターの仕事を経て新設の広報ポジションに入り、担当して約1年半。「SNSもホームページもただの道具。広報の仕事は、会社の社会からの信頼を積み重ねること」と話します。
入社当初は、社内で「インスタをやる人」と思われていたそうです。
そこで最初の半年は、社内に広報を知ってもらうことに専念しました。会社案内とホームページを新しくし、ガソリンスタンドや工場、食品の卸の現場に足を運んで、記事を書き続けました。
次の半年で、いよいよ社外への発信に着手。
周年の節目に立ち上がった記念事業をまとめ、近江八幡市との包括連携協定につなげました。そして入社から1年がたつころ、広報の効果が社内に伝わり始め、有料の配信サービスにも予算がつくようになったそうです。
連携協定では、これまでの取り組みが社会にとってどんな意義を持つかを、市と一緒に言葉にし直しました。
沖島へドラム缶のチェアを寄贈する際には、ただ贈るだけでなく、沖島小学校の子どもたちに故郷の絵を描いてもらう企画に。
取引先の梅酒づくりで捨てられていた梅の実を使い、地域の3者でクラフトビールをつくった例も紹介されました。
プレスリリースは2種類つくるそうです。
一般の読者に届くPR TIMES向けには長いものを、記者クラブにはそれをA4一枚に要約したものを送ります。
どちらも「会社が今出したい情報とずれていないか」を上長と必ず確認し、自社の宣伝ではなく社会的な価値として伝える工夫をしています。
株式会社澤村は、高島市で創業75年の建設会社です。
公共工事が中心で、ブランドやデザインとは縁遠い会社でした。事業部ごとにロゴやチラシをつくり、「どれも違う会社のよう」だったといいます。

3代目の代表のもと、2019年からリブランディングに取り組み、約80人だった社員はこの5年で約200人になりました。
この会社では、広報は「広報課」ではなく、新しいブランドを社内外に浸透させる「ブランド推進室」として始まりました。
1年目はウェブサイトの刷新、社内報の創刊、そして「数を書けばいつか当たる」と本で読んだプレスリリースに一気に取り組みました。
制作会社出身のメンバーや社内をよく知る上司との5人体制でしたが、任された領域が広く、3年目からは広報・採用・マーケティングに担当を分けています。
部署として認められるきっかけになったのは、採用応募者の変化です。
以前は1つの専門学校からの採用が中心でしたが、見せ方を変えると京都や大阪の4年制大学からも応募が来るようになりました。
中野がまず投げかけたのは、「それは尾賀亀さん、澤村さんだからできたんでしょう」という会場の本音です。
お二人とも、最初から社内の理解があったわけではありませんでした。

藤井さんの会社では、予算は「意義が伝われば出る」というスタンス。だからこそ、まず社内から「藤井さんがやっていることは良さそう」と思ってもらうことに取り組みました。
県内に13店舗あるガソリンスタンドを、1年半で約3周。最初は口もきいてもらえなかった現場が、今では「また来たんか」と迎えてくれるそうです。
現場の人の30分をもらうときには、その時間が会社にとって無駄ではない理由をその場で伝える。相手へのリスペクトを大事にしているといいます。
和田さんも、最初は「何しに来たんや」「広報って仕事してる?」という反応からのスタートだったそうです。
売上も上げないし建物もつくらない、いわば「金食い虫」。
そこで「いい人を連れてきます」と言い続け、現場の思いを聞いて採用広報に生かしました。
結果が出るまでの1、2年は、辛抱の時期だったといいます。
流れが変わったのは、社外からの反響が社内に届き始めてからです。
「CM見たよ」とお客さんに言われた営業が喜んだり、新聞記事を取引先の銀行がコピーして届けてくれたり。
そうした声が社内で広がると、協力してくれる人が増えていくそうです。
社内報も大きな力になりました。新しいことを始める広報は、ベテラン社員から「自分たちは置いてけぼりか」と思われがちです。
そこでベテランに仕事の極意を聞いて記事にすると、その人が「この前取材されたんや」と現場に話してくれる。
社内で影響力のある人を巻き込むと、その周りにも自然と広がっていきます。
「社長が広報に協力的でなかったら?」という問いには、お二人とも「外堀から埋める」と答えました。
お金のかからない発信で、メディアの取材を1件でも持ち帰る。事業部の責任者や現場の人と関係をつくり、部長陣から社長へ好意的な声が届くようにする。
そうして少しずつ広報の意味を示していくのだそうです。
藤井さんは、予算の得方も紹介しました。
「10のネタがあれば、自社メディアでは10本書ける。その中で社会的意義のある1本だけを、有料で配信させてほしいと相談する」。
また、初めてメディアから取材の問い合わせが来たきっかけが、プレスリリースではなく、毎週更新していた会社のインスタグラムだったという話もありました。何かしらの結果が出ると、社内は動きやすくなります。
最後に、これから広報を始める人が「やらないほうがいいこと」を聞きました。
藤井さんは「SNSにとらわれすぎないこと」。
バズらせることが目的になると、会社としてどう思われたいかという軸がぶれてしまうからです。
和田さんは「ひとりで走り回りすぎないこと」。
全部署を回ろうとするより、取り組みを広げてくれそうな人を見つけてつながり、そこで最初の成果をつくる。そこから一つずつ広げていけばいい、と語りました。
1日の締めくくりは、ワークショップ「会社の広報計画を立てよう」です。
ゴールはいま自分の会社や活動に必要な「広報計画」を立てること。
ただ計画を書くだけでなく、それを持って自分の上司を説得するためのシートに仕上げていきます。

この日、何度も話題にのぼったのが「社内をどう動かすか」でした。
2時間目に小倉さんが語った広報の企画を上司に通す難しさ。4時間目にお二人が話した「外堀から埋める」やり方。
広報の計画は、つくって終わりではなく、社内の理解を得てはじめて動き出します。このワークショップは、そこまでを一度体験してみる時間です。
シートが書けたら、チームの中で「発表者(自分)」と「上司」の役に分かれます。
発表者が計画を説明し、上司役はその計画にアドバイスを返す。
このフィードバックタイムを、役を交代しながら全員が行いました。

始まったばかりのころは、どのテーブルも少し固い雰囲気。
それでも言葉を交わすうちに少しずつ空気がやわらぎ、会場のあちこちから笑い声が聞こえるようになりました。
ひとりで広報を担っていると、自分の計画に意見をもらう機会はなかなかありません。
朝の「1分間チャレンジ」から始まった1日の最後に、テーブルの中に「相談できる相手」が生まれていく様子が印象的でした。
プログラムの最後には、参加者のみなさんにアンケートへの回答をお願いしました。
その間、中野と田ケ原さんが1日を振り返り。

登壇者の話の中で印象に残ったこと、そして来年の教室に向けて何をしていこうか。
アンケートを書く参加者のみなさんと一緒に、今日の学びと次の一歩をかみしめる時間になりました。
終了後は「放課後」の交流会です。
登壇者のもとにはもちろん、参加者同士でも名刺交換の輪があちこちに広がりました。
朝にお伝えした2つのポイント、「仲良くなりましょう」と「積極的に名刺交換しましょう」。どちらもしっかり押さえたうえでの解散となりました。
ご参加いただいたみなさま、ご登壇いただいたみなさま、そして主催の守山商工会議所のみなさま、本当にありがとうございました。
3回目となる今年は、記者の方、過去の受講生、県内企業の広報担当者と、さまざまな立場の方にお話しいただきました。
広報をひとりで担うみなさんにとって、この1日が日々の発信を見直すきっかけになり、地域に相談できる仲間に出会う場になっていればうれしく思います。
しがとせかいはこれからも、滋賀で発信に取り組むみなさんを応援していきます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします!