【自治体広報事例】国スポ・障スポをきっかけに関係人口を生み出す。湖南市『ハタアゲ』の企画・運営

自治体のシティプロモーションと聞くと、地域の魅力を紹介するWebサイトやSNS、PR動画、イベントなどを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

もちろん、まちの魅力を知ってもらうことは大切です。

ただ、私たちがシティプロモーションに取り組む中で感じているのは、「知ってもらったその先をどうつくるか」ということです。

イベントで地域の特産品を知ってもらう。SNSで地域の魅力を発信する。地域を訪れてもらう。

そこからもう一歩進んで、「この地域の企業に行ってみたい」「自分も地域の活動に参加してみたい」「自分の経験を活かして何かできないだろうか」と思ってもらうことはできないか。

そんな考え方から取り組んだのが、2025年度に受託した湖南市のシティプロモーション業務です。

今回は、地域の一大イベントである国スポ・障スポをきっかけに、地域の魅力発信と関係人口の創出を組み合わせた取り組みについてご紹介します。

湖南市のシティプロモーションで大切にしたこと

2025年、滋賀県では「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」が開催されました。

県内各地に選手や関係者、観戦する方々が訪れる大きな機会です。

湖南市でも、国スポの剣道競技などが開催されました。

こうした全国規模の大会は、普段は湖南市との接点が少ない方々にも、まちのことを知ってもらえる貴重な機会になります。

今回、湖南市のシティプロモーション業務では、この機会を活かした地域の魅力発信に加えて、もう一つ大切にしたことがありました。

それが、湖南市に関わる「余白」をつくることです。

地域には魅力的な商品をつくる事業者、面白い取り組みに挑戦する企業、新しいことを始めたい人たちがいます。

一方で、そうした人たちの活動が十分に知られていなかったり、地域外の人が関わるきっかけがなかったりすることもあります。

せっかく地域に興味を持ってもらっても、次に何をすればいいかわからなければ、そこで関係が途切れてしまいます。

そこで私たちは、単発のイベントや情報発信をそれぞれ実施するのではなく、地域を知った人が少しずつ関わりを深めていける仕組みをつくることにしました。

挑戦する人と、応援する人をつなぐ「ハタアゲ」

今回の事業で立ち上げたのが「ハタアゲ」というプロジェクトです。

ハタアゲでは、地域で新しいことに挑戦したい人を「ハタアゲ」、その挑戦を応援したい人を「ハタフリ」として位置づけています。

2025年の国スポ・障スポでは、選手に対して多くの人が声援を送りました。

何かに挑戦する人がいて、それを応援する人がいる。

その関係をスポーツだけでなく、地域の活動や企業の挑戦にも広げられないだろうか。

そんな発想から生まれたのが、この取り組みです。

そして、ハタアゲを単なるイベントの名称で終わらせないために、次の3つのステップを意識しました。

STEP1:知る・関心を持つ

地域の魅力や挑戦している人を知り、「面白そう」と思うきっかけをつくる。

STEP2:体験する・交流する

実際に地域を訪れ、企業や地域の人と出会い、活動を体験する。

STEP3:参加する・一緒につくる

企業や地域が抱えている課題に対して、自分のスキルやアイデアを活かして関わる。

この流れをつくるために、国スポ会場での魅力発信、企業と連携した体験プログラム、企業の課題と外部人材をつなぐプロジェクト、そしてそれらを届ける情報発信を組み合わせました。

実施① 国スポ・障スポをきっかけに、湖南市の挑戦を知ってもらう

最初の取り組みは、国スポ会場での湖南市の魅力発信です。

2025年の国スポでは、湖南市総合体育館を会場に剣道競技が開催されました。

この機会を活用し、湖南市内で活動する事業者や地域の取り組みを知ってもらうためのPRブースを企画・運営しました。

地域の商品を集めるだけではなく、その背景にある挑戦を伝える

今回のブースづくりでは、湖南市商工会などの関係者とも調整を行いながら、市内事業者の商品や取り組みを紹介しました。

大切にしたのは、単に地域の特産品を並べて販売するだけのブースにしないことです。

商品そのものの魅力はもちろん、その商品をつくっている事業者がどんな想いで活動しているのか、湖南市にはどんな挑戦があるのかという部分まで伝えることを意識しました。

来場者にとっては、スポーツ観戦をきっかけに湖南市の企業や商品を知る機会になります。

一方、出展する事業者にとっては、普段とは異なる来場者に自社の商品や取り組みを届けられる場になります。

ハタアゲのノベルティを1,000点配布

会場では「ハタアゲ」のオリジナルノベルティも制作・配布しました。

配布数は約1,000点。

ただ配るのではなく、ノベルティを通じて「ハタアゲ」というプロジェクトの存在を知ってもらい、地域の挑戦に関心を持ってもらうきっかけとしました。

また、しがとせかいのキャラクター「しがっぺ」を活用した発信にも取り組みました。

イベント会場での直接的な接点と、SNSなどでの情報発信を掛け合わせることで、当日の来場者だけではない接点づくりも意識しました。

この取り組みでは、地域の事業者との調整、商品や展示内容の企画、ノベルティ制作、ブース運営、情報発信までを一体的に実施しました。

事業としてのポイントは、国スポという既存の集客機会を、地域の魅力や活動を知ってもらう接点に変えたことです。

大きなイベントがあるから新しいイベントを重ねて開催するのではなく、すでに人が集まる機会を活かして地域への関心を広げる。

自治体のシティプロモーションにおいて、こうした設計も重要だと考えています。

実施② 「大人のクラフトツアー」で、知るだけではない地域との関わりをつくる

国スポ会場で湖南市の魅力を知ってもらった次のステップとして企画したのが、実際に湖南市の事業者を訪問する「大人のクラフトツアー」です。

今回ご協力いただいたのは、湖南市にあるチャレンジファームさんと山本材木店さんです。

近年、企業の工場や現場を一般の方に公開するオープンファクトリーの取り組みが全国で広がっています。

私たちも、企業の現場に足を運ぶことで初めてわかる魅力は非常に大きいと感じています。

今回、そこに一つ工夫を加えました。

それが、あえて参加対象を中学生以上に設定し、大人も主役になれる体験プログラムにしたことです。

チャレンジファームで、普段は見えない仕事を体験する

チャレンジファームさんでは、養鶏の現場を訪れ、卵の収穫など、日頃なかなか経験できない仕事に触れる内容を企画しました。

普段、何気なく購入している卵。

その一つがどんな環境で生まれ、どんな仕事によって私たちの手元に届いているのか。

実際に現場を訪れることで、商品だけでは伝わりにくい仕事の魅力や大変さ、事業者の工夫に触れることができます。

地域の商品を買うだけだった人が、その商品をつくっている人や現場に出会う。

こうした体験が、地域への関心を深めるきっかけになると考えました。

山本材木店で、木材の仕事とものづくりを体験する

もう一つの訪問先が、湖南市の山本材木店さんです。

材木店の仕事は、住宅や建築に関わる方でなければ、なかなか身近に感じる機会がありません。

そこで今回は、実際の仕事や木材について知るだけでなく、まな板づくりを通して木に触れるワークショップを組み合わせました。

単に説明を聞いて終わるのではなく、自分の手を動かし、ものづくりを体験する。

そうすることで、木材という素材への関心だけでなく、地域で仕事をしている事業者の技術や魅力にも触れてもらうことを目指しました。

「観光客」ではなく「地域の企業を知っている人」を増やす

このツアーで大切にしたのは、体験そのものを楽しんでもらうことに加えて、地域の企業との接点をつくることでした。

観光施設を訪問するだけでは出会うことのない企業や仕事。

そうした場所を訪れ、実際に働く人と交流し、ものづくりを体験することで、湖南市に対する見方が少し変わるかもしれません。

「湖南市にはこんな会社があるんだ」

「こんな面白い仕事をしている人がいるんだ」

「また別の場所にも行ってみたい」

そうした気持ちが生まれることも、関係人口づくりの一つの入口になると考えています。

今回は、事業者への協力依頼から、体験内容の企画、プログラム構成、参加者募集、当日の運営までを組み合わせて実施しました。

単発の工場見学ではなく、地域の企業を知り、そこで働く人と出会い、関わりを深めるプログラムとして設計したことが特徴です。

実施③ 地域企業の課題に、外部人材が関わる仕組みをつくる

国スポ会場で知る。

オープンファクトリーで体験する。

そして、その次に目指したのが、地域の企業や事業者が抱えている課題に対して、外部の人が実際に関わることです。

地域には、新しい商品をつくりたい、もっと自社の魅力を知ってほしい、これまでとは違う人たちに商品を届けたい、と考えている事業者がいます。

ただ、日々の仕事をしながら新しいことに挑戦するのは簡単ではありません。

一方で、地域の外には、企画やデザイン、広報、商品開発などの経験やアイデアを持ち、地域で何かやってみたいと考えている人もいます。

その両者をつなげることができれば、新しい取り組みが生まれるのではないか。

そう考え、企業側の課題や挑戦したいことを整理し、外部人材が関わるきっかけをつくりました。

事例1:地域の食材を掛け合わせた新商品開発

湖南市のお肉屋さんでは、既存の商品をさらに魅力的にするための商品開発に取り組みました。

地域の商材を掛け合わせ、新たなソースの開発につなげるプロジェクトです。

開発した商品は販売に向けた展開が進められ、国スポの機会を活用した試食も実施しました。

この取り組みで重要だったのは、一つの事業者だけで完結させず、地域にある異なる資源やアイデアを組み合わせたことです。

新しい商品をつくりたい事業者がいる。

その挑戦に対して、別の視点や地域の商材を掛け合わせる。

そして、開発した商品を実際に人に知ってもらう機会までつなげる。

単なるアイデア出しにとどまらず、商品という具体的な形につながった事例となりました。

事例2:漬物文化を、新しい世代や人たちにどう届けるか

もう一つの取り組みが、湖南市の漬物店「やまじょう」さんのプロジェクトです。

漬物は、日本の食文化の一つであり、地域の暮らしと結びついてきた食品でもあります。

一方で、食生活やライフスタイルが変化する中で、これまでとは違う世代や顧客にどう魅力を届けていくかという課題もあります。

そこで、やまじょうさんが持つ漬物の文化や商品に、外部人材のアイデアや視点を掛け合わせ、新しい届け方を考える取り組みを進めました。

自社の商品や文化について、日頃から向き合っている事業者だからこそ見えている魅力があります。

そこに、普段は別の仕事や活動をしている人の視点が加わることで、新しい切り口が生まれます。

大切にしたのは、事業者が持つ文化や強みを大事にしながら、新しい人に届ける可能性を広げることでした。

「応援したい」を、具体的な関わりに変える

こうした企業とのプロジェクトでは、ただ参加者を集めることが目的ではありません。

企業が本当に困っていることや実現したいことを聞き、その課題を外部の人が参加できる形に整理する必要があります。

たとえば「商品をもっと売りたい」という課題だけでは、外部の人は何をすればよいのかわかりません。

しかし、「今ある商品と地域の食材を組み合わせて新商品を考えたい」「若い世代に漬物の魅力を届ける方法を一緒に考えたい」という形になれば、参加者も自分が関われることを考えやすくなります。

企業の課題を、誰かが参加できるプロジェクトに変えていく。

これが、今回のハタアゲで大切にした考え方です。

しがとせかいでは、企業へのヒアリング、課題の整理、プロジェクト設計、参加者との接点づくり、企画の実施までを組み合わせて取り組みました。

単に交流イベントを開催するのではなく、企業の具体的な挑戦を軸に、人と地域との関係を生み出すことを目指しました。

実施④ SNS・Webでの情報発信を、参加のきっかけにつなげる

今回の事業では、国スポ会場での発信、オープンファクトリー、企業とのプロジェクトをそれぞれ単独で終わらせないよう、情報発信にも取り組みました。

ここで重視したのは、単にイベントの開催情報や結果を発信することではありません。

「湖南市でこんなことが行われています」という情報に加えて、「自分も関わってみたい」と思った人が次の行動を考えられるようにすることです。

たとえば、国スポ会場でハタアゲを知った人が、後日開催される体験プログラムに興味を持つ。

企業の取り組みをSNSで見た人が、実際に現場を訪れる。

事業者の課題を知った人が、自分の経験やスキルを活かして参加する。

情報発信を、こうした行動につながる入口として位置づけました。

また、地域の魅力発信では、きれいな風景や観光スポットだけでなく、地域の中で挑戦している人や企業そのものをコンテンツにすることも大切だと考えています。

どんな人がいるのか。

何に挑戦しているのか。

どんな人に関わってほしいのか。

そうした背景を伝えることで、地域に対する関心がより具体的なものになります。

発信することをゴールにするのではなく、発信した後にどんな行動につながってほしいかを考える。

それが、今回のシティプロモーションで意識した情報発信のあり方です。

今回の事業で生まれた成果

今回の湖南市シティプロモーション業務では、国スポ・障スポという大きな機会を活かしながら、地域の魅力発信と関係人口づくりを組み合わせた取り組みを展開しました。

実施した主な内容を整理すると、次のようになります。

取り組み実施内容・成果
国スポ会場でのPR市内事業者と連携した魅力発信、商品紹介・販売、ハタアゲのノベルティ約1,000点配布
大人のクラフトツアーチャレンジファーム、山本材木店と連携した体験型プログラム
企業との共創プロジェクト地域の食材を掛け合わせた新商品開発、試食や販売に向けた展開
地域産業の新しい届け方漬物店の課題を外部人材と考えるプロジェクト
情報発信SNS・Webなどを活用した活動紹介や参加機会の発信
共通ブランドの構築「ハタアゲ」という名称のもと、複数の取り組みを一体的に展開

もちろん、関係人口はイベントを開催しただけですぐに増えるものではありません。

参加した人がその後も地域に関わっているか。新しいプロジェクトが継続しているか。事業者にとってどんな成果があったか。

そうしたことは、今後も確認していく必要があります。

一方で、今回の事業を通じて、地域に関心を持つ入口から、実際に地域の企業や人に関わる機会までを、一つのブランドの中で設計できたことは、大きな成果だと考えています。

シティプロモーションは、発信だけで終わらせない

今回の事業を通して、改めて感じたことがあります。

それは、自治体のシティプロモーションは、地域の魅力を発信することと同じくらい、その魅力に関心を持った人が、次に何をできるのかを用意することが大切だということです。

たとえば、まちのPR動画を見て「いいところだな」と思ってもらうこと。

地域のイベントに参加して「楽しかった」と思ってもらうこと。

それだけでも大切な成果ですが、さらにその先に「次はこの企業を訪れてみたい」「地域の人と一緒に何かやってみたい」という選択肢があれば、まちとの関係は少しずつ深まっていきます。

今回の湖南市では、

知る → 体験する → 参加する → 一緒につくる

という流れを意識しました。

この仕組みは、湖南市だけに限ったものではないと思っています。

地域の事業者、農業者、商工会、地域団体、学校、行政など、まちにはさまざまな活動主体がいます。

それぞれが行っていることを単発の取り組みで終わらせるのではなく、共通するテーマやブランドのもとでつなぎ、参加できる入口をつくる。

そうすることで、従来の情報発信だけでは生まれにくかった関係を育てていけるのではないかと考えています。

自治体のシティプロモーション・関係人口創出をご検討の皆さまへ

しがとせかいでは、自治体のシティプロモーションや関係人口創出に関する事業について、企画段階から実施・情報発信まで一貫して取り組んでいます。

SNSや動画などの情報発信だけでなく、地域企業との連携、イベント企画、参加者募集、ワークショップ、外部人材とのマッチングなど、事業の目的に合わせて組み合わせることができます。

「地域の魅力をもっと発信したいけれど、何をすればいいかわからない」

「関係人口を増やす事業を考えているけれど、単発のイベントで終わらせたくない」

「地域の企業や団体を巻き込みながら、継続的な取り組みをつくりたい」

「プロポーザルに向けて、具体的な事業の組み立てを相談したい」

そんな段階からでもご相談ください。

地域の魅力を見つけ、関わるきっかけをつくり、その関係が次につながる仕組みを一緒に考えます。